コラム
後継者なしが多い理由を示す2つのデータ

後継者ありの企業・事業者の割合について、帝国データバンクが調査した全国「後継者不在率」動向調査(2025年)と、当社が独自に行った動物病院経営実態調査アンケート結果と比較した結果、後継者がいる割合がすべての産業の平均値より動物病院の方が低いことが分かりました。
本記事はアンケートの調査結果のなかでも、動物病院の後継者問題にフォーカスを当てて深く分析していきます。
動物病院に関わるお仕事をされている方であれば、誰もが直観的に感じている課題を明確なデータをもって表現しておりますので、是非ご一読ください。
獣医師数によって後継者候補は異なる
獣医師1名と、獣医師2名以上の病院で分けると、獣医師1名の動物病院では院長の年齢が上がっても後継者ありの割合がほとんど増えない結果となりました。このことから、動物病院業界で後継者ありの事業者が少ない理由の一つに、「そもそも後継者候補を雇っていない」ことがあると考えられます。
獣医師2名以上の動物病院に限定して、その後継者の属性を集計すると、「後継者が従業員である」割合が、院長の年齢とは関係がない結果となりました。従業員から後継者を育成することができる業界なら、院長の年齢とともに後継者が従業員である割合が増えるはずであるため、「勤務医を雇っていても後継者に育成していない/できていない」ことも、動物病院業界の後継者問題の一つであると考えられます。
「後継者あり」の割合は、他の業種と比べてどの程度違うのか
突然ですが、「後継者のいる動物病院は全体の何割か」ご存知でしょうか?
当社のアンケートの結果、その参考となるデータが取れましたのでご紹介いたします。

※全有効回答数 n=566
※全業種の参照元 帝国データバンク全国「後継者不在率」動向調査(2025年)
(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/)
当然ですが、院長や経営者の年代が上がるほど後継者がいる割合は高まる傾向にあります。
それを加味して経営者の年代ごとに集計をすると、「後継者あり」と回答があった動物病院の割合は、経営者が50代以下の病院では15~18%、60代で25.9%、70代では41.2%となりました。
同様に、業種を問わず、日本全国のあらゆる企業のうち、後継者ありの割合を集計した結果も上記表の動物病院の隣にグレーで示しております。
一目見れば分かる通り、すべての年代において、後継者のいる割合は全業種の数字を下回っています。50代で25.6%、60代で38.2%、70代で31.5%も後れを取っており、ただでさえ後継者不足が経済界全体で取り沙汰されている昨今、動物病院業界の後継者問題がいかに深刻かを表す結果となりました。
では、なぜこのような結果になったのでしょうか?
獣医師を雇用していないことが背景に
まず、一つ目の仮説として考えられるのは、「獣医師を雇用せず、院長先生1人で診察を回している病院が多いから」という理由です。
第一弾の記事の再掲となりますが、本アンケートの回答者のうち、獣医師数1名と回答された動物病院の割合は全体の63%でした。
| 数 | 割合 | |
|---|---|---|
| 1名 | 374 | 63% |
| 2名 | 129 | 22% |
| 3名 | 45 | 8% |
| 4名 | 25 | 4% |
| 5名 | 7 | 1% |
| それ以上 | 17 | 3% |
| 有効回答数 | 597 | 100% |
本調査だけでなく、しばしば「動物病院の6〜7割は獣医師1名」と聞いたことのある方も多いのではないかと思います。
後継者の筆頭候補たる勤務獣医師がいない動物病院では、そうでない動物病院と比べると、後継者がいる可能性は低いことが予想されます。
そこで、先ほどの後継者ありの割合の集計を、獣医師1名の病院とそうでない病院に分けて分析を行いました。

結果は、獣医師1名の病院に関しては、院長の年齢が上がった場合においても「後継者あり」の割合は増えませんでした。
一方、後継者の候補となりやすい勤務医がいる病院では、先ほどの全体集計よりも全業種に近い数値となりました。それでもやはり、50代で14.8%、60代で10.9%ほどビハインドする結果となりました。
この結果から、まず、動物病院業界の後継者不足の原因の1つが、「最も後継者になりやすい属性の一つである勤務医を雇用していないこと」であると考えられます。
そして、仮に勤務医がいたとしても、必ずしもそのなかから後継者を指名しているとは限らず、院内承継に関しても何らかの問題があるのではないか、という疑問も残ることとなりました。
次章では、勤務医がいる病院だけに焦点を当てて、院内承継の実態を深掘りいたします。
勤務医のなかから後継者を選べるわけではない
本調査では、「後継者あり」とご回答いただいた方には、その後継者と院長先生との関係性を追加でご質問させていただきました。
そのうち、獣医師数が2名以上である病院に絞って、「勤務医がいる病院では、院長の年代別に後継者になる人がどのような立場の人なのか」を確認することにしました。

※年代別に分けると、それぞれの有効回答数が30代で6件、40代で9件、50代で14件と、母数が小さいものもありますがご了承ください。
すべての年代において、ご子息やご子女を含む、院長先生のご親族が最も大きな割合を占めました。
「従業員」の区分に着目すると、院長の年代にあまり関係のない結果となりました。
もし仮に、獣医師2名以上の病院で、勤務医を後継者に育成するような業界全体の風土があれば、院長の年齢が上がるほど、後継者が従業員である割合が大きくなっても良いのではないでしょうか。
そうなっていない結果を見るに、勤務医がいる病院でも、その勤務医を次期院長に据えるための育成ができていない、あるいは育成しようとしていない、という実態があるのではないかと考えることができます。
後継者不足に、M&Aで風穴を開ける
このような後継者問題を解決するために、院長先生が取れる選択は大きく2つです。
一つは、後継者を育成するために、採用・教育を見直すことです。
雇用する獣医師がその話に前向きになるか不明である、という不確定要素は含みますし、経営のノウハウを引き継ぐことは簡単ではありませんが、それでも、何年もの歳月をかけて共に患者さんに向き合ってきた、そんな信頼できる獣医師さんに病院の未来を託せるのであれば、その労力を厭わないと思われる先生も多くいらっしゃるのではないかと思います。
もう一つの選択が、M&Aの活用です。
これから独立しようとしている、他の病院に現在勤務している獣医師、分院展開・グループ化を推進している院長先生や運営企業が買い手候補としていらっしゃいます。将来のビジョンに共感し、「この方に託した後の病院に、明るい未来が待っている」と思えるような買い手様を探すのも一つの手です。
~あと語り~
いかがでしたでしょうか?
本記事では、M&A仲介を行う当サービスならではの視点で、後継者問題に対して切り込んでみました。
業界の後継者問題について、少しでも考えるきっかけにしていただけら幸いです。
当サービスでは、後継者に関する院長先生のお悩みや、承継開業に関する独立志望の獣医師からのご相談をいつでも無料で承っております。
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